ミュージシャンの生活

昔のブログで書いたんですが、バイオリンは私の鏡の様なもので、サボると音に浮き彫りに出てきます。
無情です。
もっとサボると、自分が弾けてるか弾けてないかもわからなくなります。
そして終着点は、自分のことは棚に上げて人の批評をし始めたら墓を掘るしかないでしょう。

じゃあ、暇さえあれば練習(攫う–さらう−といいます)するのがいいのか?と言うとそんな訳ない。若い頃ならまだしもそんなことしてたら腱鞘炎になってしまう。自分のコンディションを把握した上で、いかに手を壊さずに音楽を作っていくか考えなければ、弾ける前にミュージシャンライフが終わってしまう😭 攫い過ぎて出来てたものを壊してしまい、メンタルブロックに陥ることもあります。それを回避するには疲労困憊をさけ、目標イメージが必ず頭にある事が大切だと思います。だから、楽器から離れる勇気も必要(無茶に攫わない勇気)です。目標イメージが分からなくなったら、音楽からいったん離れて、気分転換をします。余談ですが、スランプ状態で、もがき喘いでいる時に私を救ってくれたのが山登りでした。アメリカ人の友が無理やり私を連れ出し、文句たらたら言いながら山に登りました。音楽と山登りなんて全く関係もないし、攫う時間がなくなるから勿体ないと頭で思ってました。…結果、山登りを8年ほど続けてました。登る間、決して音楽を聴かず自然の音に耳を傾け、季節ごとに変わる植物を楽しんでいました。2,000段ほどある階段を上り下りする時に音楽の構成がまとまったり、自分がやりたい事が見えてくるんですよね。一見全く関係のない事でもやってみないと分からないものですね。スランプに陥ったら、一旦そこから離れて、その曲は置いて、ほかのものを弾いてみる。それで気持ちが落ち着いた頃に例の曲に戻ると、出来てる😍!!ってことも有りますから。

本題に戻りますが、音楽を作る上でそれを温めなければいけない時間というものがあります。それは決して楽器を弾いてる時間だけではないんです。付け焼き刃で演奏しなければならないこともプロだからあります。でもそれだけやっているときっと壊れてしまうんです。

私のスケジュールを見て暇でいいなあと言う人もいます。(とても忙しい人たちなんですが😅)ミュージシャンは本番で自分が作り上げた作品を伝えなければいけないんです。だから、山の景色を見たり、人とお話ししたり、本を読んだりと栄養を体に取り入れて、音楽を温める時間が大切なんです。いつも切羽詰まってたら良いもの出来ません。ヒラリーハンが1年間のサバティカルに入ったのもようく分かります。かといって、バイオリンをひかない訳じゃないでしょう。頭と心の休養、充足が必要なんです。…それは他のお仕事の人でも一緒だと思うんですよね。切羽詰まった時に焦って追い込んでもいいアイディア出にくいです。自分に合った気分転換を探すのが近道の様な気がします。

ミュージシャンのライフに終わりはないです。いつも音楽と共存してます。ただ音楽に関わってるだけが上達への道ではないんですよね。

*昨晩、友人が小さなお茶碗一杯16,000円もする素晴らしいプーアール茶をご馳走してくれました。茶の道も深いです。心温まりました。

Hong Kong Phil’s season opening concert

 

香港フィルのシーズンオープニングコンサートを9月6日、7日に終えました。

曲目は

ワーグナー:ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番   ピアノ/ Seong-Jin Cho

 

プロコフィエフ:ロミオとジュリエットからの抜粋

指揮は音楽監督の Jaap van Zweden

と言う私にとっては聞き応え十分なプログラム。

香港では今いろんなことが起きていて大変なところもあります。例えば私の家は空港の側です。コンサート当日うちの近くの地下鉄が普通に動かないかも??と心配されてました。しかし、オープニングのコンサートは何としても弾きたい‼️ なので3時間半前には家を出て(普通は1時間30分前で十分)コンサートホールまで行きました。途中何の支障もありませんでした(ホッ)。オーケストラのメンバーの大半がきっとこの様な思いでコンサート会場まで行った事は間違いないでしょう。

メンバーはリハーサルの時からいつもより更に力が入っていました。勝手に解釈してる私ですが、色んなことが起きて経験しているからこそ

“私たちの香港フィルを大事にしたい”

と気持が高まります。

マイスタージンガーの力強さ、プロコフィエフの場面ごとのキャラクターが香港フィル独自の音で光ってた様に思います。

ラフマニノフのピアノ協奏曲2番は多くの人に愛される曲。あの曲が頭に浮かんでくるラフマニノフってどういう方だったのか?といつも弾きながら考えます。今回はオーケストラのダイナミックな演奏はピアニストに劣ってなかったと思います。

金曜日はほぼ満席、土曜日も沢山の方々が聴きに来てくださり、きっと屋外で起こってる事を忘れる様な2時間を過ごせたのではないかと確信しています。

音楽の素晴らしい所って、やはり

“音楽に国境も言葉の壁もなく、一つの作品をみなさんと一緒に共有できる所”

だと思っています。

MTTの主催するコンサートで長年お伝えしている事なのですが、“音楽のパワー”を今こそ感じる時なのではないでしょうか?

23年くらいこのオーケストラに居ますが、この2日のコンサートに参加できた事、と幸せでした。

香港フィルはこれからもっともっと魅力的に変わり得るオーケストラだと思います。これからも引き続き応援よろしくお願いします。